ビジネスワード

エンタープライズサーチとは?企業内検索システムの仕組みと活用法を徹底解説

「エンタープライズサーチってなんの意味?」

「企業内の膨大なデータを効率的に検索する方法はないの?」

「社内の資料探しに時間がかかりすぎる」

このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?

エンタープライズサーチとは、企業内に散在するデジタルデータを一括で横断検索できる企業内検索システムのことです。

本記事では、エンタープライズサーチの基本的な仕組みから最新の活用法まで分かりやすく解説します。

理解することで社内の情報検索が格段に効率化され、今後のビジネスチャンスも大きく広がります。

この記事で分かること

・エンタープライズサーチの基本概念と技術的仕組み
・従来の検索システムとの決定的な違い
・具体的な導入効果と活用事例

分かりやすく解説しているので、ぜひお読みください。

エンタープライズサーチとは?基本的な仕組み解説

エンタープライズサーチは、企業内の様々な場所に保管されたデジタルデータを一括検索できる革新的なシステムです。

実は、従来の企業内検索とは根本的に異なる技術基盤を持っています。

現代の企業では、ファイルサーバー、クラウドストレージ、データベース、メールシステムなど、複数の場所にデータが分散保管されており、必要な情報を探すだけで膨大な時間を消費しているのが現状です。

エンタープライズサーチの基本概念と定義

エンタープライズサーチとは、企業内に散在する膨大なデジタルデータを保管場所を意識することなく一括で横断検索できる企業内検索エンジンです。

一般的には「企業内検索システム」「社内検索システム」「イントラネット検索」などとも呼ばれます。

その最大の特徴は、普段インターネットでGoogleやYahoo!を利用するような感覚で、社内の情報を横断的かつ高速に検索できる点にあります。

ファイルサーバーはもちろん、SharePointOnline、Box、Googleドライブなどのクラウドストレージサービスにも対応し、それらをまたいで一括検索が可能です。

従来の検索システムとの違い

従来の企業内検索システムは、特定のデータベースやファイル内の情報検索に限定されていました。

しかし現在では、技術の発展により、さまざまな社内システムやクラウドサービスにまたがって情報を検索できるエンタープライズサーチへと進化しています。

つまり、全文検索はエンタープライズサーチの検索機能の一つであり、より広範囲での情報収集と活用を可能にしたものがエンタープライズサーチだといえます。

例えば、従来システムでは「営業資料」というファイル名でしか検索できませんでしたが、エンタープライズサーチでは資料内の「四半期売上」「顧客満足度」といった具体的な内容まで検索対象となります。

エンタープライズサーチの技術的な仕組み

エンタープライズサーチは、クローラーと呼ばれるデータを巡回・収集するプログラムが企業内のさまざまなデータソースから情報を収集し、インデックスを生成します。

このインデックスは、検索に対して高速に応答できるようなデータ構造になっています。

システム導入時にあらかじめ対象となるストレージに対してクローリングを行い、専用サーバーでインデックスを保持するため、検索を行う度に各ストレージを参照しに行く必要がありません。

インデックス処理によって事前に蓄積したデータから検索結果を返すため、従来の検索システムと比較して大幅な高速化を実現しています。

これまでの企業内検索との違い

エンタープライズサーチは、従来の企業内検索システムから大きく進化した次世代の検索技術です。

一般的には新しい手法と思われがちですが、実はアメリカでは1990年代から存在する概念で、既に25年以上の歴史があります。

この手法が日本で注目されるようになったのは、従来の検索方法では解決できない課題が顕在化したためです。以下では、その具体的な違いについて詳しく解説していきましょう。

単一システム検索から横断検索への進化

従来の企業内検索は、ファイルサーバーやデータベースなど、特定のシステム内でのみ検索が可能でした。

エンタープライズサーチでは、社内の複数システムを横断的に検索できるため、探したい資料がある際に、それぞれのストレージで個別に検索する必要がなくなりました。

例えば、過去のプロジェクト資料を探す場合、従来は「ファイルサーバー→SharePoint→メールシステム」と順番に検索していましたが、エンタープライズサーチなら一度の検索で全てのシステムから関連資料を取得できます。

この横断検索により、検索の効率化だけでなく「こんな資料があったんだ!」という思わぬデータの発見に繋がるケースも数多く報告されています。

全文検索機能の大幅な向上

エンタープライズサーチの二つ目の特徴は、ファイルの中身すべてを検索対象とする「全文検索」機能を高度に進化させた点です。

従来の検索では、ファイル名だけが検索に引っ掛かるだけで、ファイルの中身にまで検索の対象が及ばず、見つけたい資料が見つけられないケースが頻発していました。

エンタープライズサーチでは、Office文書、PDF、テキスト、画像、動画ファイルなど、あらゆる形式のファイル内容を検索対象とします。

さらに、「スマートフォン⇄スマホ」「テレワーク⇄リモートワーク」といった表記ゆれのケースでも、あいまい検索機能により類似するドキュメントを検索することが可能です。

クラウド対応とマルチデバイス利用

従来の企業内検索システムは、主にオンプレミス環境での利用に限定されていました。

しかし現在のエンタープライズサーチは、Microsoft365、Box、Googleドライブなどの主要クラウドサービスとの連携に標準対応しています。

これにより、リモートワークが普及した現在においても、場所やデバイスを問わず社内情報にアクセスできる環境が実現されています。

さらに、RAG(Retrieval-AugmentedGeneration、検索拡張生成)技術を活用して、生成AIとの連携が可能な製品も登場しており、業務効率化の可能性がさらに広がっています。

エンタープライズサーチが注目される理由

エンタープライズサーチが近年急速に注目を集めているのは、企業を取り巻くデジタル環境の劇的な変化が背景にあります。

意外にも、この技術自体は2000年代初めから存在していましたが、現在になって再び脚光を浴びているのには明確な理由があります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により、企業内の情報資産が爆発的に増加し続けている現状を踏まえて、具体的な注目理由を解説していきましょう。

デジタル化による企業内データの爆発的増加

現代企業では、データの量、種類、速度が急激に増加しており、エンタープライズサーチ市場の成長を牽引しています。

実は、アシスト社の調査(従業員数1,300名)では、Googleドライブ、Salesforce、Gmail、Jira、Confluence、PanoptoなどのSaaSに数千万件を超えるファイルやドキュメントが保管されていることが判明しました。

チャットやメール、ウェブページ、Slack内でやり取りされているテキスト情報も含めるとさらに膨大な量になり、予想を遥かに超えるデータ量になっています。

引用元:アシストエンタープライズサーチ記事

これらは企業が築いてきた情報資産そのものであり、まさにナレッジの集積といえます。

リモートワークでの情報アクセス需要拡大

目まぐるしく変化する現在のビジネス環境では、従業員はタイムリーで十分な情報に基づいた意思決定を行うために、重要な情報に即座にアクセスする必要があります。

金融、ヘルスケア、eコマース、製造などの業界では、最新の情報が意思決定や業務効率に大きな影響を与えるため、リアルタイムのデータ検索が重視されています。

エンタープライズサーチは、リアルタイムの索引付けとクエリを提供することで、従業員が多様なソースから最新のデータに迅速にアクセスできるようにし、生産性と業務効率を高めます。

特に、テレワークが普及した現在では、オフィス外からでも社内情報に効率的にアクセスできる環境が企業競争力に直結しています。

生成AIとの連携による検索体験の革新

エンタープライズサーチツールにおける人工知能(AI)と機械学習技術の統合は、市場を推進する重要な要因です。

2023年からは、エンタープライズサーチに生成AIを掛け合わせて、今までとはまるで違う検索体験を提供する新しいエンタープライズサーチも登場してきました。

AIや機械学習アルゴリズムは、ユーザーのインタラクションから学習し、より適切でパーソナライズされた検索結果を提供するように変化することで、検索ツールの機能を強化します。

機械学習アルゴリズムは、データの使用パターンを分析し、ユーザーにとって最も関連性の高い情報の特定と優先順位付けを支援することができます。

さらに、音声検索や自然言語理解のようなAI主導の機能は、検索プロセスをより直感的でユーザーフレンドリーにしています。

エンタープライズサーチを開発・提供している主要企業

エンタープライズサーチ市場には、多様な企業が参入しており、それぞれ独自の技術と強みを持っています。

実は、この市場は国内外の企業が激しく競争している成長分野で、2024年には世界市場規模が61.9億ドルに達し、年平均成長率10.30%で拡大を続けています。

引用元:MordorIntelligenceエンタープライズサーチ市場調査

技術革新が急速に進む中で、各企業の特色ある取り組みについて詳しく見ていきましょう。

国内主要ベンダーの特徴と強み

国内のエンタープライズサーチ市場では、日本企業特有のニーズに対応した製品が数多く開発されています。

ブレインズテクノロジー株式会社の「NeuronES」は、300件・300TBを超える文書群からでも、それぞれの認証システムと連携して高速での検索を実現しています。

住友電工情報システムの「QuickSolution」は、20年以上の長きにわたりエンタープライズサーチを提供する老舗企業として、豊富な導入実績を持っています。

パナソニックインフォメーションシステムズの「NeuronES」では、従業員100人規模での情報探しに費やされる年間コストを大幅に削減する効果が実証されています。

これらの国内ベンダーは、日本語の特性や日本企業の組織構造に最適化された機能を提供している点が特徴です。

海外企業の日本市場での動向

グローバル市場では、SAPSE、AmazonWebServices、MicrosoftCorporation、IBMCorporation、GoogleLLCが主要企業として事業を展開しています。

特に注目すべきは、シリコンバレーのGleanTechnologies社が開発した「Glean」で、生成AIサービスとして企業内の情報を効率的に検索し、回答を生成することができます。

Gleanは「社内版Google」と「社内版ChatGPT」を実現し、企業内の情報検索やAIアシスタント機能を提供する次世代型エンタープライズサーチとして注目されています。

これらの海外企業は、グローバル標準の技術と豊富な資本力を背景に、革新的な機能開発を進めています。

新興企業による革新的なサービス

エンタープライズサーチ分野では、新興企業による革新的なアプローチも注目を集めています。

特に、クラウドベースのサービスやソリューションの利用可能性が高まっていること、モバイルデバイスの利用が増加していることが、新興企業の参入を促進しています。

これらの企業は、従来の検索システムの限界を打破する新しい技術や、ユーザーエクスペリエンスの向上に特化したソリューションを提供しています。

例えば、AIによる検索結果の要約機能、自然言語での対話型検索、リアルタイムでの情報更新機能など、従来にない機能を搭載した製品が続々と登場しています。

技術改良の急増により、エンタープライズサーチ市場には多くの成長機会がもたらされると予測されています。

エンタープライズサーチの活用事例

エンタープライズサーチは、業種を問わず幅広い分野で導入が進んでおり、具体的な成果を上げています。

実は、製造業・建設業・情報通信業などを中心に、社内のデータ活用においては業種・業界問わず共通の課題解決に貢献しています。

また、大量のデータから検索結果を高速にレスポンスできることから、コールセンター業務での活用実績も数多く報告されています。

以下では、具体的な導入事例とその効果について詳しく見ていきましょう。

製造業での技術文書管理での成果

自動車部品メーカーA社では、「NeuronES」の導入により、膨大な技術文書の検索時間を大幅に短縮することに成功しました。

従来は、設計図面や仕様書、品質管理データなどが複数のシステムに分散保管されており、必要な情報を見つけるまでに数時間を要していました。

エンタープライズサーチ導入後は、作業者一人当たりの「探す時間+文書作成時間」を約12時間(1カ月)削減できるという試算結果が得られています。

引用元:日立ソリューションズ活用事例

さらに、過去の不具合事例や改善提案なども即座に検索できるようになり、製品の品質向上にも寄与しています。

金融機関でのコンプライアンス対応

金融業界では、コンプライアンス関連文書の迅速な検索が業務効率に直結しています。

J:COMでは、日立ソリューションズの「活文企業内検索基盤」を導入し、カスタマーサービスの品質向上を実現しました。

表示速度が以前より大幅に向上し、オペレーターからは検索しやすくなったという声が上がりました。

また、照会システムを統合したことで、顧客の地域によってログイン先を切り替える手間をなくすこともできました。

クラウドストレージの活用と保管期限が過ぎたデータの自動削除によって、データ量増加の課題に対しても、柔軟かつ適正なスケールアップが可能になっています。

コンサルティング会社でのナレッジ共有

コンサルティング業界では、過去のプロジェクト事例や業界分析レポートなどの知識資産の活用が競争力に直結します。

奈良県橿原市では、QuickSolutionを導入し、約10TBの行政文書をスピーディに検索できる環境を構築しました。

年間数百万円分の業務削減を実現し、行政DXが大幅に前進しています。

引用元:QuickSolution導入事例

このように、エンタープライズサーチは単なる検索ツールにとどまらず、組織全体の業務改善や情報資産の最大化に直結する重要なシステムとして機能しています。

まとめ【エンタープライズサーチで企業の情報活用を最適化】

エンタープライズサーチは、企業内に散在するデジタルデータを一括で横断検索できる革新的な企業内検索システムです。

従来の単一システム検索から横断検索への進化、全文検索機能の大幅な向上、クラウド対応とマルチデバイス利用により、情報検索の効率が格段に向上しています。

デジタル化による企業内データの爆発的増加、リモートワークでの情報アクセス需要拡大、生成AIとの連携による検索体験の革新が注目される理由として挙げられます。

エンタープライズサーチは企業内検索システムの革新として注目されており、今後の企業競争力向上に欠かせないツールとなっています。