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スマートベータとは?投資初心者でも分かる仕組みと特徴を解説

「スマートベータって何?」

「従来のインデックス投資とは何が違うの?」

「投資信託やETFでよく見るけど仕組みが分からない」

このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?

スマートベータとは、従来の時価総額加重型指数とは異なる基準で構成された投資手法です。

財務指標や配当利回りなどの特定要素に基づいて銘柄を選定し、市場平均を上回る収益を目指します。

本記事では、スマートベータの基本的な仕組みから従来の投資手法との違い、注目される理由まで分かりやすく解説します。

理解することで投資の選択肢が広がり、今後のポートフォリオ構築にも役立つでしょう。

この記事で分かること

・スマートベータの基本的な仕組みと特徴
・従来のインデックス運用・アクティブ運用との違い
・GPIFなど機関投資家が注目する理由と活用事例

分かりやすく解説しているので、ぜひお読みください。

スマートベータとは?投資戦略の基本解説

スマートベータは、従来の時価総額加重型インデックスとは異なる基準で銘柄を選定・組み入れる投資戦略です。

「スマート(賢い)」と「ベータ(市場平均連動性)」を組み合わせた用語で、より効率的な市場平均の実現を目指します。

特定のファクター(要因)に基づいて構成された指数に連動する運用を行い、長期的に市場平均を上回る収益を狙います。

スマートベータの基本的な仕組み

スマートベータの仕組みは、実は1990年代から存在する概念です。

一般的には新しい投資手法と思われがちですが、アメリカでは既に30年以上の歴史があります。

従来のTOPIXや日経平均のように時価総額の大きさで銘柄比重を決めるのではなく、財務指標や株価変動率などの特定要素を重視します。

例えば、ROE(自己資本利益率)の高い企業を中心に構成したり、配当利回りの高い銘柄を優先的に組み入れたりします。

このような客観的なルールに基づいて指数を構成し、その指数に連動する運用を行うのがスマートベータ運用の特徴です。

代表的なファクターには、高配当型、低ボラティリティ型、バリュー型、グロース型、クオリティ型などがあります。

従来のインデックス運用との違い

従来のインデックス運用では、時価総額の大きい企業ほど投資比重が高くなる構造でした。

意外にも、この方式では一部の大型株に投資が集中し、分散効果が限定的になる場合があります。

スマートベータでは、時価総額以外の基準を用いることで、より効率的な分散投資を実現します。

例えば、等金額投資型では全銘柄に同じ金額を投資し、時価総額による偏りを回避します。

また、最小分散型では価格変動の小さい銘柄を中心に構成し、リスクを抑えながらリターンの向上を目指します。

野村證券スマートベータ指数によると、中長期的に市場平均を上回るパフォーマンスを期待する指数として年金運用やETFの連動指数として採用が進んでいます。

スマートベータが注目される背景

スマートベータが注目される最大の理由は、インデックス運用とアクティブ運用の課題を同時に解決する可能性があることです。

インデックス運用は低コストですが大きなリターンは期待できず、アクティブ運用は高リターンを狙えるものの手数料が高いという問題がありました。

スマートベータ運用は、客観的なルールに基づく指数連動運用により、低コストを維持しながら市場平均を上回る収益を目指します。

実際に、ニッセイ基礎研究所の調査では、投資期間が5年で98%、10年で100%近くのスマートベータ指数がTOPIXのパフォーマンスを上回るという結果が示されています。

この長期的な優位性が、年金基金をはじめとする機関投資家の関心を集める要因となっています。

スマートベータと従来の投資手法との違い

スマートベータは、従来のパッシブ運用とアクティブ運用の中間に位置する投資戦略として位置づけられます。

それぞれの運用手法の利点を取り入れながら、欠点を補完する「いいとこ取り」の運用方法です。

具体的な違いを理解することで、自分の投資目的に適した手法を選択できるようになります。

インデックス運用との比較ポイント

従来のインデックス運用は、TOPIXやS&P500のような時価総額加重型指数に連動する運用が主流でした。

実は、時価総額加重型では時価総額の大きい企業に投資が集中し、分散効果が制限される場合があります。

スマートベータでは、時価総額以外の基準を用いることで、より効率的な分散投資を実現します。

例えば、等金額投資型のスマートベータでは、全銘柄に同じ金額を投資し、大型株への偏重を回避します。

また、低ボラティリティ型では価格変動の小さい銘柄を重視し、リスクを抑制しながらリターンの向上を目指します。

コスト面では、両者ともパッシブ運用のため信託報酬は比較的低く設定されています。

アクティブ運用との違いとメリット

アクティブ運用は、ファンドマネージャーの判断により銘柄選択や売買タイミングを決定する運用手法です。

一般的には高いリターンを期待できる反面、運用手数料が高く、ファンドマネージャーの能力に依存するリスクがあります。

スマートベータ運用では、客観的なルールに基づいて機械的に銘柄選定を行います。

具体的には、ROE、配当利回り、株価変動率などの定量的な指標を用いて、透明性の高い運用を実現します。

この仕組みにより、アクティブ運用と比較して大幅に運用コストを削減できます。

また、ファンドマネージャーの主観的判断に依存しないため、安定した運用成果を期待できる点も大きなメリットです。

パッシブとアクティブの中間的な特徴

スマートベータの最大の特徴は、パッシブ運用の透明性・低コストとアクティブ運用の収益性を両立する点です。

意外にも、この中間的なアプローチは投資理論の発展とともに生まれた新しい概念です。

パッシブ運用のようにルールベースで運用しながら、市場平均を上回る収益を目指すアクティブな要素を含んでいます。

例えば、JPX日経インデックス400は、ROEや営業利益などの客観的指標を用いて400銘柄を選定します。

この選定プロセスは完全に透明化されており、恣意的な判断が入る余地がありません。

結果として、投資家は低コストで運用の透明性を保ちながら、市場平均を上回る可能性のある投資を行えるようになります。

スマートベータが注目される理由

スマートベータが世界的に注目される背景には、従来の投資手法では解決困難な課題への対応策として期待されていることがあります。

特に機関投資家を中心に急速に普及しており、投資業界における新たなトレンドとなっています。

その注目度の高さは、具体的な導入事例や運用実績からも確認できます。

機関投資家による採用増加の背景

スマートベータの採用が急拡大している最大の要因は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による本格導入です。

実は、GPIFは世界最大の年金基金で、運用資産額は約200兆円に達します。

このような巨額資金を運用する機関がスマートベータを採用したことで、投資業界における信頼性が大幅に向上しました。

引用元:年金積立金管理運用独立行政法人によると、GPIFは2014年から国内株式アクティブ運用におけるスマートベータ型の運用を開始しています。

海外でも、アメリカの年金基金や大手機関投資家が相次いでスマートベータを導入しており、グローバルなトレンドとなっています。

この流れは、長期的な安定収益を求める機関投資家のニーズとスマートベータの特性が合致していることを示しています。

低コストでの運用実現

従来のアクティブ運用では、銘柄調査や売買判断にかかる人的コストが運用成績を圧迫する課題がありました。

スマートベータ運用では、あらかじめ設定されたルールに基づいて機械的に運用するため、大幅なコスト削減が可能です。

具体的には、一般的なアクティブファンドの信託報酬が年率1-2%程度であるのに対し、スマートベータ型ETFでは0.1-0.5%程度に抑えられています。

例えば、JPX日経インデックス400連動ETFの信託報酬は年率0.25%程度で運用されています。

この低コスト性により、長期投資において複利効果を最大化できる点が高く評価されています。

また、運用プロセスの透明性も高く、投資家が運用内容を理解しやすい点も重要な魅力です。

長期的な超過収益への期待

スマートベータの最も注目される特徴は、長期的に市場平均を上回る可能性があることです。

意外にも、短期的には必ずしも優位性を発揮しないものの、投資期間が長くなるほど優位性が顕著に現れる傾向があります。

ニッセイ基礎研究所の分析では、投資期間1年では約80%のスマートベータ指数がTOPIXを上回る程度ですが、5年では98%、10年では100%近くが上回る結果となっています。

特に高配当型のスマートベータは、20年の長期投資において最も高いリターンを記録しています。

この長期的優位性は、企業の本質的価値に基づく銘柄選定が時間の経過とともに報われることを示しています。

そのため、年金基金のような超長期投資を行う機関投資家にとって、非常に魅力的な投資手法として認識されています。

スマートベータを活用している主要企業と機関

スマートベータは、世界各国の主要な機関投資家や運用会社によって積極的に採用されています。

特に日本では公的年金を運用するGPIFが先駆けとなり、その後民間の運用会社も続々と参入しています。

これらの具体的な活用事例を知ることで、スマートベータの実用性と信頼性を理解できます。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の活用事例

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、スマートベータを本格的に導入した世界最大級の年金基金です。

実は、GPIFは2014年4月から国内株式アクティブ運用においてスマートベータ型の運用を開始しました。

運用資産額約200兆円という巨額資金の一部をスマートベータで運用し、安定的な超過収益の実現を目指しています。

具体的には、JPX日経インデックス400をベンチマークの一つとして採用し、ROEなどの財務指標を重視した運用を行っています。

GPIFのスマートベータ採用は、同手法の有効性を世界的に認知させる契機となりました。

引用元:年金積立金管理運用独立行政法人によると、2014年4月現在の運用受託機関には野村グループとゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどがスマートベータ型運用を担当しています。

国内外の運用会社の取り組み

国内の主要運用会社では、日興アセットマネジメント、野村アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントなどがスマートベータ商品を提供しています。

海外では、ブラックロック、ステート・ストリート、バンガードなどの世界大手運用会社がスマートベータETFを積極的に展開しています。

意外にも、米国のETF市場では純資産残高の約2割がスマートベータ型ETFで占められており、その影響力は年々増大しています。

例えば、ブラックロックの「iシェアーズ」シリーズには、低ボラティリティ型、高配当型、クオリティ型など多様なスマートベータETFがラインナップされています。

これらの運用会社は、それぞれ独自のファクター分析技術を駆使して差別化を図っています。

日本国内でも、スマートベータ型の投資信託やETFの本数は年々増加しており、個人投資家の選択肢も着実に拡大しています。

主要な指数提供会社とサービス

スマートベータ指数の開発・提供では、MSCI、S&Pダウ・ジョーンズ、FTSERussell、日本経済新聞社などが主要なプレイヤーです。

MSCIは、高配当株指数、最小分散指数、クオリティ指数など幅広いスマートベータ指数を提供しています。

特に「MSCI日本株高配当低ボラティリティ指数」は、国内ETF「上場高配当低ボラティリティ(1399)」の連動対象として採用されています。

S&Pダウ・ジョーンズは、配当貴族指数やクオリティ指数などで定評があり、世界中の運用会社に指数を提供しています。

日本では、日本経済新聞社と日本取引所グループ、東京証券取引所が共同開発した「JPX日経インデックス400」が代表的なスマートベータ指数として広く利用されています。

これらの指数提供会社は、学術研究に基づいた高度な分析技術を駆使して、投資家のニーズに応える多様なスマートベータ指数を継続的に開発しています。

スマートベータの代表的な活用事例

スマートベータの実用性は、具体的な成功事例を通じて確認できます。

特に日本市場では、JPX日経インデックス400の成功事例や、多様なETF商品の登場により、その有効性が実証されています。

これらの事例は、理論だけでなく実際の運用におけるスマートベータの価値を示しています。

JPX日経インデックス400の成功事例

JPX日経インデックス400は、日本で最も成功したスマートベータ指数の代表例です。

実は、この指数は2014年の算出開始以来、TOPIXを継続的に上回るパフォーマンスを実現しています。

ROE、営業利益、時価総額の3つの基準で選定された400銘柄で構成され、企業の質的向上を重視した指数設計が特徴です。

具体的には、算出開始から2024年まで、長期的にTOPIXを数パーセント上回る年率リターンを記録しています。

この成功により、GPIFをはじめとする機関投資家から高い評価を獲得し、スマートベータ普及の原動力となりました。

また、企業側においても、同指数への組み入れを目指してROE改善に取り組む動きが広がり、日本企業の経営改革促進にも貢献しています。

スマートベータETFの市場動向

国内のスマートベータETF市場は、過去10年間で着実に拡大しています。

意外にも、初期の商品は限られていましたが、現在では高配当型、低ボラティリティ型、クオリティ型など多様な選択肢が提供されています。

代表的な商品には、「上場インデックスファンドJPX日経インデックス400(1592)」や「上場高配当低ボラティリティ(1399)」があります。

特に「上場高配当低ボラティリティ(1399)」は、高配当と低価格変動性を両立するスマートベータ指数に連動し、安定志向の投資家から支持を集めています。

海外ETFでは、バンガードの「米国高配当株式ETF(VYM)」や、iシェアーズの低ボラティリティ型ETFシリーズが人気を博しています。

これらのETFは、従来のインデックスETFと比較して僅かに高い信託報酬を設定していますが、長期的な超過収益への期待から投資家の関心を集め続けています。

投資家のスマートベータに対する理解が深まるにつれ、今後さらなる市場拡大が予想されています。

まとめ【スマートベータで投資の選択肢を広げる】

スマートベータは、従来のインデックス運用とアクティブ運用の課題を解決する新しい投資戦略として注目を集めています。

時価総額以外の客観的な基準で銘柄を選定することで、低コストを維持しながら市場平均を上回る収益を目指せる点が最大の特徴です。

GPIFをはじめとする世界最大級の機関投資家による採用実績は、スマートベータの有効性を裏付ける重要な証拠といえます。

長期投資において優位性を発揮する傾向があり、特に5年以上の投資期間では高い確率で従来のインデックスを上回る成果を期待できます。

JPX日経インデックス400の成功事例や多様なETF商品の登場により、個人投資家にとっても身近な投資選択肢となっています。

スマートベータの理解を深めることで、投資目的に応じたより柔軟な資産運用が可能になり、長期的な資産形成における新たな可能性を開拓できます。