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ネオバンクとは?デジタル専業銀行の仕組みと特徴を完全解説

ネオバンクって最近よく聞くけど、どんな銀行なの?」

「従来の銀行とは何が違うの?」

「JALやヤマダ電機が銀行サービスを始めたって本当?」

このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?

ネオバンクとは、銀行免許を持たない企業が既存銀行と提携して提供するデジタル専業の金融サービスです。

スマートフォンアプリを中心とした革新的なサービス設計により、従来の銀行では実現できなかった利便性と顧客体験を提供しています。

本記事では、ネオバンクの基本的な仕組みから主要企業の事例まで分かりやすく解説します。

理解することで、デジタル時代の新しい金融サービスの全体像が把握でき、今後のビジネスチャンスも見えてくるでしょう。

この記事で分かること

・ネオバンクの基本的な仕組みと特徴
・従来銀行との具体的な違いとメリット
・日本の主要ネオバンクサービスの活用事例

分かりやすく解説しているので、ぜひお読みください。

ネオバンクとは?わかりやすく解説

ネオバンクは、デジタル技術を駆使して新しい形の銀行サービスを提供する事業形態です。

実は、この概念は2010年頃からアメリカで発達し始めた比較的新しいビジネスモデルです。

以下、ネオバンクの詳しい仕組みについて解説していきます。

ネオバンクの基本的な仕組み

ネオバンクは、自社では銀行免許を取得せず、既存銀行の免許を活用してサービスを提供する銀行代理業者です。

住信SBIネット銀行などの既存銀行と提携し、その銀行のシステムとオープンAPIを連携することで金融サービスを実現しています。

例えば、JALNEOBANKの場合、JALペイメント・ポート株式会社が住信SBIネット銀行を所属銀行とする銀行代理業者として各種銀行商品を提供しています。

顧客が利用するのはJALブランドのアプリですが、実際の銀行機能は住信SBIネット銀行のシステムで動作しています。

このように、フロントエンドの顧客体験とバックエンドの銀行システムを分離することで、企業独自のサービス設計が可能になります。

銀行免許の仕組みと代理業の特徴

一般的に銀行業を営むには金融庁からの銀行免許が必要ですが、ネオバンクは銀行代理業として既存銀行の免許下でサービスを提供します。

銀行代理業とは、銀行免許を持つ金融機関の代理として預金受入れや貸付の媒介業務を行う事業形態です。

この仕組みにより、ネオバンク事業者は巨額の資本金や複雑な規制対応を必要とせず、比較的短期間でサービス開始が可能になります。

住信SBIネット銀行の場合、2020年4月からNEOBANKサービスを開始し、2023年8月には口座数100万を突破しました。

引用元:住信SBIネット銀行プレスリリース

現在では20社を超えるパートナー企業との提携により、多様な業界でネオバンクサービスが展開されています。

デジタル技術を活用したサービス提供

ネオバンクの最大の特徴は、スマートフォンアプリを中心としたデジタルファーストの設計思想です。

従来の銀行のようにATMや支店に依存せず、すべての金融サービスをアプリ内で完結できる仕組みを構築しています。

具体的には、AIを活用した与信審査、リアルタイム通知機能、パーソナライズされた財務インサイトなどの機能が組み込まれています。

また、オープンAPIの活用により、他のフィンテックサービスとの連携も容易になり、顧客にとってより包括的な金融体験を提供できます。

世界のネオバンキング市場は2023年に984億米ドルと評価され、2032年までに3兆4,064億米ドルに成長すると予測されています。

引用元:FortuneBusinessInsights調査

これまでの従来銀行との違い

ネオバンクと従来の銀行では、サービス提供方法から収益構造まで根本的な違いがあります。

特に物理的インフラの有無とデジタル化の程度において大きな差が見られます。

従来の銀行業界に対する新しいアプローチについて詳しく解説します。

物理店舗の有無とデジタル完結

従来の銀行が支店やATMネットワークに依存するのに対し、ネオバンクは完全にデジタル上で運営されます。

実店舗を持たないことで、営業時間の制約がなく24時間365日いつでもサービスを利用できます。

口座開設から各種手続きまで、すべてスマートフォンアプリ内で完結するため、利用者は銀行に足を運ぶ必要がありません。

例えば、第一生命NEOBANKでは、アプリのダウンロードから口座開設、各種銀行取引まですべてスマートフォン専用アプリで行います。

この結果、従来の銀行で必要だった書面手続きや印鑑証明などの煩雑なプロセスが大幅に簡素化されています。

手数料構造の違いとコスト削減

物理的なインフラを持たないネオバンクは、従来の銀行よりも低コスト構造でサービスを提供できます。

支店の維持費や人件費が不要なため、その分を顧客への還元に回すことが可能です。

具体的には、振込手数料の無料回数増加、ATM利用手数料の削減、外貨預金の為替コスト低減などの形で顧客メリットを創出しています。

JALNEOBANKの場合、利用状況にかかわらず振込手数料が月5回、ATM入出金手数料が月5回まで無料で利用できます。

また、従来の銀行では難しかった小額投資や自動貯蓄機能なども、デジタル技術により低コストで提供されています。

サービス提供方法の革新

ネオバンクは、単なる銀行サービスの提供ではなく、顧客の生活に密着したエコシステムの構築を目指しています。

各企業の既存サービスと金融機能を組み合わせることで、これまでにない顧客体験を創造しています。

例えば、航空会社のJALでは、銀行利用でマイルが貯まる仕組みを構築し、飛行機に乗らなくても日常生活でマイルを獲得できます。

ヤマダ電機のヤマダNEOBANKでは、家電購入とローンサービスを連携させ、住宅ローンに家具・家電の購入費用を組み込むことが可能です。

このように、業界の垣根を越えた新しい金融サービスの形が生まれています。

ネオバンクが注目される理由

ネオバンクへの注目が高まっている背景には、規制環境の変化と消費者ニーズの多様化があります。

特に日本では2018年の改正銀行法によってオープンAPIが整備され、フィンテック企業の参入が促進されました。

ネオバンクが急速に普及している理由について詳しく解説します。

オープンAPIの整備と規制緩和

2018年の改正銀行法により、日本でもオープンAPIの導入が義務化され、ネオバンクが発展する土壌が整いました。

オープンAPIとは、銀行システムの一部を外部の事業者が安全に利用できるようにする技術的な仕組みです。

この規制緩和により、フィンテック企業や異業種企業が銀行機能を活用したサービスを提供しやすくなりました。

住信SBIネット銀行は、この変化をいち早く捉えて2020年にNEOBANKサービスを開始し、現在では国内最大のBaaSプラットフォームに成長しています。

金融庁の方針として、金融業界のイノベーション促進と顧客利便性向上が重視されており、今後もネオバンクを支援する環境が続くと予想されます。

顧客体験の向上とニーズの変化

現代の消費者は、シームレスで直感的なデジタル体験を求めており、従来の銀行サービスでは満たされないニーズが顕在化しています。

特にミレニアル世代やデジタルネイティブ世代にとって、ネオバンクのユーザーエクスペリエンスは非常に魅力的です。

リアルタイム通知、支出管理機能、目標設定による自動貯蓄など、従来の銀行にはない付加価値サービスが評価されています。

世界のネオバンキング利用者数は2028年までに3億8,600万人を超えると予想されており、デジタルバンキングへの需要は確実に拡大しています。

引用元:Stripe調査レポート

異業種企業の金融サービス参入

ネオバンクの仕組みにより、従来は金融業界と関係のなかった企業も銀行サービスを提供できるようになりました。

航空、小売、不動産、スポーツなど様々な業界の企業が、自社の顧客基盤を活用して金融サービスに参入しています。

これらの企業にとって、金融サービスは顧客との接点強化と収益多様化の重要な手段となっています。

BaaS(BankingasaService)の市場拡大により、非金融企業でも比較的低コストで銀行機能を導入できる環境が整っています。

今後、さらに多くの業界でネオバンク型のサービスが登場し、金融業界の競争環境が大きく変化することが予想されます。

ネオバンクを開発・提供している主要企業

日本のネオバンク市場は、住信SBIネット銀行を中心としたBaaSプラットフォームによって急速に発展しています。

現在、20社を超える企業が様々な業界でネオバンクサービスを展開しており、それぞれ独自の特徴を持っています。

主要な事業者とその特徴について詳しく解説します。

住信SBIネット銀行のNEOBANKプラットフォーム

住信SBIネット銀行は、日本最大のフルバンキングBaaSプラットフォームを運営しており、国内ネオバンク市場のリーダー的存在です。

2007年の営業開始以来培ってきた最先端テクノロジーと金融ノウハウを活用し、パートナー企業に包括的な銀行機能を提供しています。

2020年4月のNEOBANKサービス開始から3年余りで口座数100万を突破し、同行全体の口座数に占める割合も15%を超えています。

預金・融資・決済を含むフルバンキングサービスを提供できる事業者として、業界での競争優位性を確立しています。

引用元:住信SBIネット銀行IR情報

同行のプラットフォームは、パートナー企業のブランドを活かしながら高度な銀行機能を組み込める柔軟性が評価されています。

JALNEOBANKとマイル連携サービス

JALNEOBANKは、日本航空(JAL)とJALペイメント・ポートが提供する航空業界初のネオバンクサービスです。

JALマイレージバンク会員を対象とした銀行サービスで、預金や振込などの利用状況に応じてマイルが貯まる仕組みを構築しています。

2020年4月のサービス開始時は「JALGlobalWallet」会員向けでしたが、現在では一般のJALマイレージバンク会員も利用可能です。

住宅ローンや外貨預金などの金融商品利用でもマイルが獲得でき、航空券として交換できるほか、JALPayでの決済にも利用できます。

非航空領域での顧客接点拡大を目指すJALの戦略の中核を担うサービスとして位置付けられています。

ヤマダNEOBANKと家電ポイント連携

ヤマダNEOBANKは、ヤマダホールディングスが「暮らしまるごと戦略」の一環として展開する小売業界のネオバンクです。

ヤマダデンキの店舗ネットワークと連携し、家電購入から住宅ローンまで一気通貫でサービスを提供しています。

預金や振込などの銀行利用に応じて「ヤマダポイント」が貯まり、家電購入時の支払いに利用できる独自のエコシステムを構築しています。

住宅ローンでは、通常の住宅購入費用に加えて家具・家電の購入費用も組み込むことが可能で、顧客の生活全体をサポートしています。

実店舗を持つ小売業ならではの強みを活かし、オンラインとオフラインを融合したサービス設計が特徴です。

ネオバンクの活用事例

ネオバンクは各業界の特性を活かした多様なサービス展開を見せており、従来の金融サービスでは実現できなかった顧客価値を創造しています。

保険、ポイントサービス、スポーツなど様々な分野でユニークな活用事例が生まれています。

具体的な事例を通じて、ネオバンクの可能性について詳しく解説します。

第一生命NEOBANKの資産形成サポート

第一生命NEOBANKは、生命保険業界初のネオバンクとして、保険と銀行サービスを連携させた独自のサービスを提供しています。

第一生命の保険契約者が満期時に受け取る一時金を、第一生命NEOBANKに預けることで継続的な関係を維持する仕組みを構築しています。

資産形成サービス会員限定のサービスとして、満15歳以上の個人が専用アプリから利用できます。

預金利用に応じて第一生命NEOBANKポイントが貯まり、現金への交換やデビットカード決済に利用可能です。

保険から銀行、さらに資産形成まで一貫したライフサイクルサポートを実現している点が評価されています。

VNEOBANKのVポイント活用

VNEOBANKは、CCCライフパートナーズ株式会社が運営するTSUTAYAブランドを活用したネオバンクです。

Vポイント(旧Tポイント)との連携により、銀行利用でポイントが貯まり、貯まったポイントを銀行サービスで活用できるエコシステムを構築しています。

TSUTAYAの店舗ネットワークと連携し、エンターテイメント分野での顧客接点を金融サービスに活用しています。

書籍・映画・音楽などのコンテンツ消費と金融サービスを組み合わせた独自のカスタマージャーニーを提案しています。

ポイント経済圏の拡大により、顧客のライフスタイル全体を包括するサービス展開を目指しています。

異業種企業のブランド活用事例

ネオバンクの展開により、様々な業界の企業が金融サービスを通じて顧客との関係強化を図っています。

高島屋NEOBANKでは、百貨店の上質なサービスブランドを金融分野にも展開し、富裕層向けの特別なバンキング体験を提供しています。

北海道日本ハムファイターズのFNEOBANKでは、スポーツファンとチームを金融サービスで結び付ける新しい応援の形を創造しています。

不動産業界のRENOSYBANKでは、物件購入から資金調達まで一貫したサービスを提供し、投資用不動産の取得を支援しています。

これらの事例は、ネオバンクが単なる金融サービスを超えて、各業界の固有価値と組み合わせた新しいビジネスモデルを生み出していることを示しています。

まとめ【ネオバンクがもたらす金融サービスの新しい形】

ネオバンクは、デジタル技術を活用して既存銀行の免許下で新しい金融サービスを提供する革新的なビジネスモデルです。

物理店舗を持たないデジタルファーストの設計により、24時間365日いつでも利用できる利便性と、従来の銀行では実現できなかった低コスト構造を実現しています。

JAL、ヤマダ電機、第一生命など様々な業界の企業が参入し、それぞれの顧客基盤と組み合わせた独自のサービスを展開することで、金融業界の枠を超えた新しい価値創造が始まっています。

世界的に見てもネオバンキング市場は急速に拡大しており、2032年までに3兆ドルを超える市場規模になると予測されています。

今後、さらに多くの企業がネオバンクを活用した顧客接点強化を図ることで、金融サービスの在り方そのものが大きく変化していくことが予想されます。