「IPO準備でショートレビューが必要と聞いたけれど、具体的にどのような調査なの?」
「ショートレビューと監査の違いがよく分からない」
「費用はどのくらいかかるのか知りたい」
このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?
ショートレビューとは、監査法人がIPO準備企業に対して実施する短期間の調査で、上場に向けた課題を抽出することを目的としています。
本記事では、ショートレビューの基本的な仕組みから実施時期、費用相場、監査法人の選び方まで分かりやすく解説します。
理解することで、IPO準備をより効率的に進められるようになり、今後のビジネス成長戦略の立案にも役立つでしょう。
この記事で分かること
・ショートレビューの基本的な仕組みと実施目的
・監査や他の調査手法との違いと特徴
・費用相場と監査法人選定のポイント
分かりやすく解説しているので、ぜひお読みください。
目次
ショートレビューとは?IPO準備企業向け解説
ショートレビューとは、監査法人がIPO準備企業に対して実施する短期間の調査です。
正式には「短期調査」や「予備調査」「クイックレビュー」とも呼ばれており、上場に向けた課題を抽出することが主な目的となります。
実は、ショートレビューは1990年代からアメリカで行われていた手法で、日本では2000年代以降に本格的に導入されました。
ショートレビューの基本的な仕組み
ショートレビューは、通常3~5人の公認会計士チームが3~5日間かけて実施します。
監査法人が企業を訪問し、事前に提出された資料の確認とヒアリングを通じて現状を調査します。
調査範囲は財務諸表だけでなく、内部統制や経営管理体制まで幅広く対象となります。
ショートレビューが行われる背景と目的
IPO審査基準には「最近2年間の財務諸表等について、監査法人または公認会計士の監査等を受けていること」が含まれています。
この監査契約を締結する前段階として、企業の現状と上場基準とのギャップを把握するためにショートレビューが実施されます。
ショートレビューによって課題が明確になることで、企業は効率的にIPO準備を進められるようになります。
ショートレビューの実施期間と調査範囲
ショートレビューの標準的な期間は、資料準備から報告書作成まで含めて約2~3週間です。
現地調査は通常2日~1週間程度で、その後1週間程度で報告書が作成されます。
調査範囲には会社概要、コーポレートガバナンス、内部管理体制、業績管理体制、関連当事者取引、適時開示体制、会計処理などが含まれます。
ショートレビューと通常監査との違い
ショートレビューと通常監査は、実施目的と調査の深度が大きく異なります。
監査は財務諸表の適正性を保証する業務ですが、ショートレビューは課題抽出を目的とした調査です。
一般的には監査に比べて短期間で実施され、コストも抑えられるという特徴があります。
監査とショートレビューの調査内容の差
通常監査では、財務諸表の数値が適正かどうかを詳細に検証し、監査意見を表明します。
一方、ショートレビューでは上場基準を満たすための改善点を洗い出すことに重点を置きます。
例えば、監査では売上計上の妥当性を証憑で確認しますが、ショートレビューでは売上計上基準が適切に設定されているかを確認します。
ショートレビューと四半期レビューとの違い
四半期レビューは、上場企業が四半期ごとに実施する財務報告の適正性確認です。
ショートレビューは上場準備段階の企業が対象で、IPOに向けた課題発見が目的となります。
四半期レビューは継続的な業務ですが、ショートレビューは通常1回限りの調査として実施されます。
ショートレビューと内部監査の役割の違い
内部監査は企業の内部組織が自社の業務プロセスや統制を評価する活動です。
ショートレビューは外部の監査法人が客観的な視点で企業を評価する点で大きく異なります。
内部監査は継続的な改善活動ですが、ショートレビューは上場準備の特定時点での現状診断という位置づけです。
ショートレビューが注目される理由
ショートレビューが注目される背景には、IPO市場の拡大と監査法人を取り巻く環境変化があります。
近年、スタートアップ企業の上場ラッシュが続く中、監査法人のリソース不足が深刻化しています。
この状況により、効率的なIPO準備手法としてショートレビューの重要性が高まっています。
IPO企業数増加による監査法人の需要拡大
2020年以降、日本のIPO企業数は年間80~100社程度で推移しており、監査法人への需要が急増しています。
特に東証グロース市場の創設により、成長企業の上場機会が拡大しました。
この結果、監査法人は限られたリソースで多くの企業をサポートする必要に迫られ、ショートレビューによる効率的な課題抽出が重要になっています。
監査法人を取り巻く環境変化と規制強化
監査法人に対する規制強化により、内部管理体制の強化が求められています。
中小監査法人では行政処分が相次いだことから、上場会社監査事務所の登録制度が法定化されました。
これにより監査品質の向上は図られましたが、同時に監査工数の増加と人手不足が深刻化し、ショートレビューでの事前準備がより重要になっています。
ショートレビューによる早期課題発見の重要性
従来は指摘事項を改善しながら監査契約を締結できましたが、現在は事前準備が不可欠です。
ショートレビューで多くの指摘を受けると、監査法人との契約締結が困難になる可能性があります。
早期に課題を発見し改善することで、IPO準備のスケジュール遅延リスクを最小限に抑えることができます。
ショートレビューを実施している主要監査法人
ショートレビューを提供する監査法人は、大手から中小まで幅広く存在します。
一般市場での大手監査法人のシェアは約4割を占める一方、中小監査法人の存在感も高まっています。
費用相場は150万円~400万円程度で、企業規模や調査範囲によって変動します。
大手監査法人のショートレビューサービス
EY新日本有限責任監査法人、デロイトトーマツ有限責任監査法人、PwCあらた有限責任監査法人などの大手監査法人がショートレビューを提供しています。
大手監査法人は豊富な実績とノウハウを持ち、上場後も継続してサポートできる体制を整えています。
ただし、会計士の人手不足により、受注を制限するケースも増えており、複数の候補を用意することが重要です。
中小監査法人の特徴とIPO支援実績
中小監査法人では、IPO支援に特化した専門チームを設置している法人も多数存在します。
ショートレビューの費用は200~300万円台が一般的で、大手よりも柔軟な対応が期待できます。
特にTOKYOPROMarketでは中小監査法人のシェアが高く、成長企業との親和性も良好です。
監査法人選定のポイントと注意点
ショートレビュー実績の豊富さと、同業種・同規模企業での上場支援経験を確認することが重要です。
ショートレビューのみで終わらず、上場まで一貫してサポートしてくれる監査法人を選ぶべきです。
契約前にショートレビュー報告書のサンプルを確認し、調査の網羅性と指摘の具体性を評価することをお勧めします。
ショートレビューの活用事例
ショートレビューを効果的に活用した企業は、IPO準備期間を大幅に短縮できています。
着々と準備を進めている企業でも、平均50~100の項目について指摘を受けるのが現状です。
早期実施により課題を洗い出し、計画的に改善を進めることが成功の鍵となります。
IPO準備企業の課題発見と改善事例
ある成長企業では、ショートレビューにより経理処理の現金主義から発生主義への変更が必要と指摘されました。
この企業は指摘を受けて経理担当者を増員し、会計システムを刷新することで、予定通りIPOを実現できました。
また、内部統制の不備が発見された企業では、業務フローの見直しと規程整備により、監査法人からの信頼を得ることができました。
ショートレビュー実施タイミングの成功例
上場申請3期前(N-3期)にショートレビューを実施した企業は、十分な改善期間を確保できています。
一方、タイミングが遅れた企業では、課題改善に時間がかかり、IPO時期が1~2期延期されるケースも見られます。
成功企業の多くは、N-4期以前から準備を開始し、N-3期の第2四半期を目安にショートレビューを受けています。
まとめ【ショートレビューでIPO準備を効率化】
ショートレビューは、IPO準備企業にとって避けて通れない重要な調査です。
監査法人による短期間の調査により、上場に向けた課題を早期に発見し、効率的な改善計画を立てることができます。
現在の監査法人を取り巻く環境変化により、事前準備の重要性はますます高まっています。
費用は150万円~400万円程度が相場で、企業規模や調査範囲によって変動します。
監査法人選定では、実績の豊富さと上場までの一貫サポート体制を重視することが成功の鍵となります。
IPO準備を検討している企業は、早期にショートレビューを実施し、計画的な改善に取り組むことで、スムーズな上場実現を目指すことができるでしょう。