「益金不算入って何のこと?」
「受取配当金が税金の計算に含まれないってどういう意味?」
「法人税の申告で益金不算入を適用できるのか分からない」
このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?
益金不算入とは、会計上は収益として計上されるものの、税務上は益金(法人税計算の基礎となる利益)として計上しない制度のことです。
実は、この制度は二重課税を防ぐために設けられた重要な仕組みで、適切に活用することで企業の税負担を軽減することができます。
本記事では、益金不算入の基本的な仕組みから具体的な適用事例まで分かりやすく解説します。
理解することで適切な法人税計算が可能になり、今後の税務処理における重要な判断材料を得ることができます。
この記事で分かること
・益金不算入の基本的な仕組みと目的
・受取配当金やみなし配当の益金不算入制度
・企業が活用できる具体的な節税効果
分かりやすく解説しているので、ぜひお読みください。
目次
益金不算入とは?法人税の基本解説
益金不算入は、法人税計算において企業の税負担を適正化する重要な制度です。
この制度により、会計上の収益と税務上の益金の違いを調整し、合理的な課税が実現されています。
法人税法第22条では「別段の定めがあるもの」として益金不算入の根拠が示され、二重課税の防止と税制の公平性が保たれています。
益金不算入の基本的な仕組み
益金不算入とは、会計上は収益として処理するが、法人税の計算では益金に含めない制度です。
実は、この制度は企業の二重課税を防ぐという重要な役割を果たしています。
例えば、A社がB社の株式を保有し、B社から配当金100万円を受け取ったとします。
B社は既に法人税を支払った利益から配当金を支払っているため、A社でも同じ利益に対して再び法人税を課すのは不合理です。
そこで益金不算入制度により、A社では受取配当金を法人税の計算から除外することができます。
この仕組みにより、同じ利益に対する重複した課税を避けることが可能になります。
益金と収益の重要な違い
益金と収益は似ているようで、実は明確な違いがあります。
収益は企業会計上の概念で、会社の利益計算に使用されます。
一方、益金は税法上の概念で、法人税の計算に使用される収益のことです。
具体的には、会計上の利益は「収益-費用」で計算され、税法上の所得は「益金-損金」で計算されます。
例えば、受取配当金は会計上では営業外収益として計上されますが、税法上は益金不算入として処理されることがあります。
この違いを理解することで、正確な法人税計算が可能になります。
益金不算入が節税に与える効果
益金不算入制度は、企業の実質的な節税効果をもたらします。
例えば、法人税率が23.2%の企業が100万円の受取配当金を全額益金不算入できた場合、約23万円の法人税負担軽減効果があります。
ただし、すべての受取配当金が全額益金不算入になるわけではありません。
株式の保有割合によって益金不算入の割合が決まり、完全子法人株式なら100%、非支配目的株式なら20%などと区分されています。
また、みなし配当や還付加算金なども益金不算入の対象となるケースがあります。
適切な制度理解により、合法的な税負担軽減を実現することができます。
益金不算入と益金算入の違い
益金不算入と益金算入は、税務上の所得計算において対となる重要な概念です。
両者の違いを正しく理解することで、適切な法人税計算と税務調整が可能になります。
特に会計処理と税務処理の相違点を把握し、それぞれの役割を理解することが企業の税務管理において不可欠です。
益金算入の概要と特徴
益金算入とは、会計上は収益として処理していないものを、税務上は益金として計上することです。
一般的には「益金不算入」の方が注目されがちですが、実は益金算入も重要な税務調整です。
例えば、法人税額から控除する外国子会社の外国税額や、国庫補助金等に係る特別勘定の取崩額などが益金算入の対象となります。
また、無償による資産の譲受けも、会計上は収益として計上しませんが、税務上は時価で益金算入する必要があります。
益金算入のタイミングは、資産の引き渡しが行われた日や役務の提供が行われた日と法人税法で明確に定められています。
これにより課税の公平性が保たれる仕組みになっています。
益金不算入の判定基準
益金不算入の判定は、法人税法の「別段の定め」によって決まります。
主な判定基準は、二重課税の回避と税負担の適正化という2つの観点です。
具体的には、受取配当金については株式の保有期間と保有割合によって判定されます。
例えば、配当の支払いに係る基準日前1月以内に取得し、その計算期間の末日後2月以内に譲渡した株式からの配当は益金不算入の対象外となります。
みなし配当については、資本金等の額を超える部分が益金不算入の対象となります。
還付金については、法人税や住民税の還付は益金不算入ですが、事業税の還付は益金算入となる点に注意が必要です。
税務調整における両者の役割
益金算入と益金不算入は、税務上の所得を適正に計算するための両輪です。
会計上の利益と税法上の所得が一致しない理由は、それぞれの目的が異なるためです。
会計は株主等への経営成績報告を目的とし、税法は課税の公平を目的としています。
例えば、会計上では将来の費用を引当金として計上しますが、税法上では確定していない費用は損金不算入となります。
逆に、会計上では計上しない無償取引も、税法上では益金算入の対象となります。
これらの調整により、企業の実態に応じた適正な課税所得が算出され、公平な税負担が実現されています。
益金不算入が注目される理由
益金不算入制度が企業の税務戦略において重要視される背景には、複数の要因があります。
近年の法人税制改正や企業のグローバル化により、この制度の重要性はさらに高まっています。
特に投資活動や組織再編が活発化する中で、適切な税務処理による競争力維持が企業経営の重要課題となっています。
二重課税防止の重要性
益金不算入制度が注目される最大の理由は、不合理な二重課税を防ぐ機能にあります。
実は、この問題は法人間の配当取引で頻繁に発生する課題です。
例えば、親会社が子会社から受け取る配当金は、子会社が既に法人税を支払った利益が原資となっています。
もしこの配当金に対して親会社でも法人税を課せば、同じ利益に対して2回課税されることになります。
国際的には、法人擬制説という考え方が採用されており、法人は株主の集合体として捉えられています。
この考え方に基づき、受取配当金の益金不算入制度により二重課税が回避され、税制の合理性が保たれています。
法人税制改正の背景
益金不算入制度は、平成27年度の税制改正で大幅に見直されました。
改正前は持株比率による区分が3区分でしたが、改正後は4区分に細分化されています。
具体的には、完全子法人株式(100%)、関連法人株式(1/3超)、その他株式(5%超1/3以下)、非支配目的株式(5%以下)という区分です。
この改正により、持株比率が高い投資については100%益金不算入とする一方、持株比率が低い投資については益金不算入割合を引き下げる方向となりました。
みなし配当の益金不算入についても、適格要件が厳格化され、恣意的な税務処理を防ぐ仕組みが強化されています。
これらの改正により、企業の投資判断に対する税制の中立性が向上しています。
企業の税負担軽減への影響
益金不算入制度は、企業の実質的な税負担軽減に大きな影響を与えています。
特に持株会社や投資会社にとって、この制度の活用は経営戦略上重要な要素となっています。
例えば、グループ会社間での配当については、完全支配関係があれば配当金の全額が益金不算入となります。
また、還付加算金の益金不算入制度により、過去の過誤納税に対する利息相当額も課税対象外となります。
投資信託からの分配金についても、一定の要件を満たせば益金不算入の適用が可能です。
これらの制度を適切に活用することで、企業は合法的かつ効果的な税務戦略を構築することができます。
益金不算入を適用する主要企業
益金不算入制度を戦略的に活用する企業は、主に投資事業や持株業務を行う法人です。
これらの企業では、配当収入や組織再編による収益が主要な収益源となっており、制度の適切な活用が経営効率に直結しています。
業種や事業形態により益金不算入の適用パターンが異なるため、各企業の特性に応じた税務戦略が重要となります。
受取配当金の益金不算入企業
受取配当金の益金不算入制度を活用する企業は、主に持株会社や投資事業を行う法人です。
実は、この制度は企業グループの資本効率向上において重要な役割を果たしています。
例えば、総合商社や金融持株会社では、子会社や関連会社からの配当収入が主要な収益源となっています。
三菱UFJフィナンシャル・グループのような金融持株会社では、傘下の銀行や証券会社からの配当を受け取ります。
ソフトバンクグループのような投資持株会社では、多数の投資先企業からの配当やキャピタルゲインを得ています。
これらの企業では、益金不算入制度により配当収入に対する二重課税が回避され、効率的な資本運用が実現されています。
みなし配当を扱う企業
みなし配当の益金不算入は、M&Aや組織再編を行う企業で頻繁に活用されています。
特に自己株式の取得や資本政策の変更において、この制度の理解は欠かせません。
例えば、事業承継を控えた中小企業では、後継者への株式移転のために自己株式取得を行うケースがあります。
上場企業では、株主還元策として自己株式取得を実施し、その際にみなし配当が発生することがあります。
合併や会社分割を行う企業では、組織再編に伴う株主への金銭交付がみなし配当として扱われます。
これらの企業では、みなし配当の適切な税務処理により、組織再編コストの最適化が図られています。
還付加算金を受ける企業
還付加算金の益金不算入は、税務調査や申告修正を経験した企業で適用されます。
一般的には、過誤納税の是正により還付が発生した際に関係する制度です。
例えば、税務調査により過大申告が判明し、更正の請求を行った企業では還付金と還付加算金を受け取ります。
中間納付額が確定申告額を上回った企業では、還付手続きの際に還付加算金が付されます。
欠損金の繰戻し還付を受けた企業では、還付金とともに還付加算金を受け取ることがあります。
これらの企業では、還付金は益金不算入として処理し、還付加算金は益金算入として適切に区分することが重要です。
益金不算入の活用事例
益金不算入制度の実際の活用事例を通じて、企業の税務メリットを具体的に理解できます。
特に受取配当金とみなし配当における益金不算入の適用は、企業の資金効率化と税負担軽減に大きく貢献しています。
これらの事例は、同様の状況にある企業にとって有効な参考指標となり、適切な税務戦略立案の基礎となります。
受取配当金の益金不算入事例
受取配当金の益金不算入制度の活用事例として、グループ会社間の資金効率化が挙げられます。
実は、この制度を戦略的に活用することで、企業グループ全体の税負担を最適化することができます。
例えば、持株会社A社が子会社B社の株式を100%保有している場合を考えてみましょう。
B社が1,000万円の配当をA社に支払った際、A社では全額が益金不算入として処理されます。
法人税率が23.2%の場合、約232万円の税負担軽減効果が生まれます。
一方、関連会社(持株比率1/3超)からの配当では、負債利子控除後の金額が全額益金不算入となります。
この制度により、グループ内での資金移動に伴う税務コストを最小化し、効率的な資本配分が実現されています。
みなし配当の益金不算入事例
みなし配当の益金不算入は、事業承継や組織再編において重要な税務メリットをもたらします。
特に中小企業の事業承継では、この制度の活用が後継者の負担軽減につながります。
例えば、創業者が所有する株式を会社が自己株式として買い取るケースを考えてみましょう。
資本金1,000万円、利益剰余金2,000万円の会社が、1株あたり30万円で100株を取得したとします。
この場合、3,000万円の支払いのうち、資本相当額1,000万円を超える2,000万円がみなし配当となります。
法人株主であれば、持株比率に応じてこのみなし配当の全部または一部が益金不算入となり、税負担が軽減されます。
この仕組みにより、円滑な事業承継と適正な税負担が両立されています。
まとめ【益金不算入で適切な法人税計算を実現】
益金不算入は、企業の法人税計算において欠かせない重要な制度です。
会計上は収益として処理されるものの、税務上は益金に算入しないこの仕組みにより、不合理な二重課税が防がれています。
特に受取配当金については、株式の保有割合に応じて益金不算入の適用範囲が決まり、完全子法人からの配当は全額が対象となります。
みなし配当や還付金についても、適切な要件を満たせば益金不算入として処理することができます。
平成27年度の税制改正により制度が細分化され、企業の投資判断に対する税制の中立性が向上しました。
この制度を正しく理解し活用することで、合法的な税負担軽減と適正な法人税計算が実現できます。
参考URL
- https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/46590/
- https://www.yayoi-kk.co.jp/kaikei/oyakudachi/ekikin/
- https://the-owner.jp/archives/4377
- https://keiriplus.jp/tips/uketorihaitou_ekikinfusannyu/
- https://koyano-cpa.gr.jp/nobiyo-kaikei/column/4516/