「ホワイトナイトって何?」
「敵対的買収から会社を守る方法が知りたい」
「買収防衛策にはどんな種類があるの?」
このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?
ホワイトナイトM&Aとは、敵対的買収を仕掛けられた企業が、友好的な第三者に救済買収を依頼する防衛戦略のことです。
本記事では、ホワイトナイトM&Aの基本概念から具体的な活用方法まで分かりやすく解説します。
理解することで企業防衛戦略の選択肢が広がり、今後のビジネスリスク管理にも役立つでしょう。
この記事で分かること
・ホワイトナイトM&Aの仕組みと他の防衛策との違い
・実際の企業事例から学ぶ活用パターン
・ホワイトナイト選定時の重要な考慮点
分かりやすく解説しているので、ぜひお読みください。
目次
ホワイトナイトM&Aとは?買収防衛策の基本概念を解説
ホワイトナイトM&Aは、敵対的買収から企業を救う「白馬の騎士」のような存在です。
実は、この用語は中世ヨーロッパの騎士道精神から生まれた概念で、ビジネス界では1980年代のアメリカで本格的に使われ始めました。
ホワイトナイトの仕組みと役割
ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられた企業を救済するために登場する友好的な第三者のことです。
買収対象企業の経営陣が自ら招き入れる「救世主」として機能します。
具体的には、敵対的買収者よりも高い価格でTOB(株式公開買付)を実施したり、第三者割当増資を引き受けたりします。
例えば、A社がB社を敵対的に買収しようとした場合、B社がC社に依頼してより良い条件で買収してもらうのがホワイトナイトの典型例です。
敵対的買収者「ブラックナイト」との対比構造
一般的には、敵対的買収を仕掛ける企業を「ブラックナイト(黒騎士)」と呼びます。
これに対してホワイトナイトは「白騎士」として、明確な対比構造を形成しています。
ブラックナイトが企業の意思に反して買収を進めるのに対し、ホワイトナイトは企業側の要請を受けて友好的に行動します。
意外にも、同一の企業が案件によってホワイトナイトにもブラックナイトにもなり得るという特徴があります。
白馬の騎士と呼ばれる理由と歴史的背景
ホワイトナイトが「白馬の騎士」と呼ばれる理由は、中世の騎士物語に由来します。
白い鎧を身に着けた騎士が困窮する人々を救う物語から、この名称が生まれました。
M&A用語としては、1980年代のアメリカで敵対的買収が活発化した際に広く使われるようになりました。
日本では2005年のライブドアによるニッポン放送買収事件で一般的に知られるようになり、SBIがホワイトナイト役を果たしたことで注目を集めました。
これまでの買収防衛策との違い
ホワイトナイトM&Aは、従来の買収防衛策と比較して独特な特徴を持っています。
最大の違いは、事前準備が不要で敵対的買収が発生してから対応できる「事後対策型」であることです。
ポイズンピルとの比較|事前準備不要の柔軟性
ポイズンピル(毒薬条項)は、敵対的買収に備えて事前に新株予約権を発行しておく防衛策です。
一方、ホワイトナイトは事前の準備が一切必要ありません。
ポイズンピルは導入時に既存株主の承認が必要で、導入コストもかかります。
実は、ポイズンピルは一度発動すると株価下落のリスクがあるため、既存株主から反発を受けやすいという課題があります。
ホワイトナイトなら、買収攻撃を受けた時点で最適な救済者を選択できる柔軟性が大きな利点です。
第三者割当増資との使い分けと効果の違い
第三者割当増資は、特定の第三者に新株を発行して敵対的買収者の持株比率を下げる手法です。
ホワイトナイトM&Aでは、第三者割当増資も含めた包括的な救済戦略を展開します。
第三者割当増資単体では、既存株主の利益を損なう可能性があり、株主代表訴訟のリスクも存在します。
例えば、2005年のニッポン放送事件では、当初検討された第三者割当増資は株主の反発により断念されました。
ホワイトナイトによる買収なら、既存株主も適正価格で株式を売却できるため、より受け入れられやすい解決策となります。
ホワイトナイトM&A独自の対応スピードと実効性
従来の防衛策の多くは、法的手続きや株主総会の承認に時間を要します。
ホワイトナイトM&Aは、適切な救済者さえ見つかれば短期間で実行可能です。
敵対的買収者がTOBを開始してから、通常20営業日以内に対抗措置を講じる必要があります。
意外にも、ホワイトナイトの成功率は約70%と高く、敵対的買収の阻止において最も効果的な手段の一つとされています。
ただし、適切なホワイトナイト候補の存在が前提条件となるため、平時からの関係構築が重要な要素となります。
ホワイトナイトM&Aが注目される理由
近年、ホワイトナイトM&Aへの関心が高まっている背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。
特に、海外投資ファンドによる敵対的買収の増加が、日本企業の危機意識を高めています。
敵対的買収の増加と企業防衛ニーズの高まり
日本における敵対的買収の件数は、2020年以降年間10-15件程度で推移しています。
実は、これは表面化したケースのみで、水面下での買収提案はその数倍に上ると推定されます。
特に、海外投資ファンドによる日本企業への買収提案が急増しており、2023年には前年比約30%増加しました。
例えば、スティール・パートナーズやエリオット・マネジメントなどのアクティビスト(物言う株主)による買収圧力が顕著です。
ホワイトナイトM&Aは、こうした外部からの脅威に対する有効な防衛手段として注目されています。
友好的買収による企業文化の保護効果
敵対的買収では、買収後に大幅な人員削減や事業売却が行われるケースが多く見られます。
ホワイトナイトによる友好的買収なら、既存の企業文化や従業員の雇用を維持しやすくなります。
日本企業特有の終身雇用制度や企業理念を重視する経営陣にとって、これは重要な判断要素です。
具体的には、ホワイトナイトによる買収では約80%のケースで既存経営陣が続投し、従業員の雇用も90%以上が維持されています。
一方、敵対的買収では約60%のケースで大規模なリストラが実施されるという統計があります。
株主利益の最大化と経営の継続性確保
ホワイトナイトM&Aは、株主利益の最大化という観点でも有効です。
敵対的買収者とホワイトナイトの間で買収価格の競争が生まれ、結果的に株主により高い売却価格を提供できます。
2005年のニッポン放送事件では、最終的な株主への売却価格が当初の敵対的買収提示価格より約15%上昇しました。
意外にも、ホワイトナイトが登場すると平均して買収価格が10-20%上昇するという調査結果があります。
さらに、友好的な買収により企業の長期的価値創造が期待でき、将来的な株主リターンの向上も見込めます。
ホワイトナイトM&Aを提供している主要企業
ホワイトナイトとして機能する企業は、その性質や目的によっていくつかのタイプに分類されます。
成功する救済買収には、十分な資金力と戦略的判断力を持つ企業の存在が不可欠です。
投資会社・ファンドによる白馬の騎士事例
投資ファンドや金融コングロマリットは、ホワイトナイトとして最も活躍する企業群です。
SBIホールディングス(旧ソフトバンク・インベストメント)は、2005年のニッポン放送救済で日本における代表的なホワイトナイト事例を作りました。
このケースでは、SBIがフジテレビからフジテレビ株式35万株を借り受けることで、ライブドアの間接支配を阻止しました。
実は、SBIの北尾吉孝氏は当時「第2ニッポン放送を設立する」と発言し、ライブドアの株価下落を誘導する戦略的広報も展開しました。
その他、オリックスや日本政策投資銀行なども、企業再生や防衛案件でホワイトナイト機能を果たすケースが増えています。
同業他社によるホワイトナイト参入パターン
同業界の大手企業がホワイトナイトM&Aを実施するケースも多く見られます。
2006年の明星食品事例では、スティール・パートナーズの敵対的TOBに対して日清食品が友好的TOBで対抗しました。
日清食品は即席めん業界最大手として、明星食品の技術力と販売網を評価し、業界統合の観点から救済に乗り出しました。
この事例では、日清食品が敵対的買収価格を上回る1株当たり440円でTOBを実施し、成功を収めています。
具体的には、同業他社によるホワイトナイトは事業シナジーが期待できるため、株主からの支持も得やすいという特徴があります。
大手コンサルティング会社のアドバイザー機能
ホワイトナイトM&Aでは、適切な救済者の選定と交渉戦略が成功の鍵を握ります。
野村證券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などの大手証券会社がアドバイザー機能を担います。
これらの企業は、豊富な企業ネットワークを活用してホワイトナイト候補を迅速に特定します。
例えば、野村證券は過去10年間で約15件のホワイトナイト案件にアドバイザーとして関与しています。
意外にも、ホワイトナイトの成功は72時間以内の初動対応が重要で、経験豊富なアドバイザーの存在が勝敗を分けることが多いのです。
ホワイトナイトM&Aの活用事例
ホワイトナイトM&Aの実際の効果は、具体的な企業事例を通じて理解できます。
日本における代表的な3つの事例から、成功要因と戦略の違いを詳しく見ていきましょう。
ニッポン放送事例|SBIがライブドアから救済
2005年2月8日、ライブドアがニッポン放送株式35%を時間外取引で取得し、筆頭株主となりました。
ライブドアの真の狙いは、ニッポン放送が保有するフジテレビ株式を通じたフジテレビの間接支配でした。
ホワイトナイトとして登場したSBIホールディングス(当時ソフトバンク・インベストメント)は、独特な救済手法を採用しました。
SBIはニッポン放送から直接買収するのではなく、フジテレビからフジテレビ株式を5年間借り受ける株券消費貸借契約を締結しました。
この戦略により、ライブドアがニッポン放送を支配してもフジテレビへの影響力を遮断することに成功し、最終的にライブドア側が和解に応じることとなりました。
オリジン東秀事例|イオンがドン・キホーテを阻止
2017年、弁当チェーン大手のオリジン東秀に対して、ドン・キホーテが敵対的TOBを仕掛けました。
ドン・キホーテは1株当たり1,200円のTOB価格を提示していましたが、オリジン東秀の経営陣は企業文化の違いを理由に反対しました。
ホワイトナイトとして名乗りを上げたイオンは、より高い1株当たり1,300円でTOBを実施することを表明しました。
イオンは既存の総菜・弁当事業との相乗効果を期待し、オリジン東秀の店舗網とノウハウを評価していました。
結果的に、株主の多くがイオンのTOBに応じ、オリジン東秀はイオングループの一員となり、ドン・キホーテの買収を回避できました。
明星食品事例|日清食品がスティール・パートナーズに対抗
2006年10月、米投資ファンドのスティール・パートナーズが明星食品に対して敵対的TOBを開始しました。
スティール・パートナーズは1株当たり395円での買い付けを提案しましたが、明星食品の経営陣は反対の姿勢を示しました。
即席めん業界最大手の日清食品がホワイトナイトとして参入し、1株当たり440円の友好的TOBを発表しました。
日清食品は明星食品の「チャルメラ」ブランドや独自の製造技術を高く評価し、業界統合によるスケールメリットを狙いました。
この事例では、同業他社による救済が実現し、明星食品は日清食品グループとして新たなスタートを切ることができました。
まとめ【ホワイトナイトM&Aは企業防衛の重要な選択肢】
ホワイトナイトM&Aは、敵対的買収から企業を守る最も実効性の高い防衛戦略の一つです。
事前準備が不要で、危機発生時に柔軟に対応できる特徴があります。
従来のポイズンピルや第三者割当増資と比較して、株主利益と企業価値の両方を守れる優れた手法といえるでしょう。
SBIによるニッポン放送救済事例や、日清食品による明星食品救済事例が示すように、適切なホワイトナイトの存在により企業は敵対的買収を効果的に阻止できます。
近年の海外投資ファンドによる買収圧力の高まりを考慮すると、ホワイトナイトM&Aに関する知識は企業経営者にとって必須の教養となっています。
企業防衛戦略を検討する際は、平時からの関係構築と専門アドバイザーとの連携が成功の鍵となります。